CAPNAは1995年10月に設立総会を開催し、2025年(令和7年)には設立満30周年を迎えます。この長い期間にわたり、皆様方のご尽力とご支援のおかげでCAPNAは存続してくることができました。心より感謝申し上げます。
CAPNA「設立総会」には、東京の子どもの虐待防止センター理事の広岡智子さんをお招きして開催しました。当初は、夫である広岡知彦さんに講演をお願いしていたのですが、9月に重篤な病のために入院されてしまい、知彦さんから智子さんに「僕の代わりにCAPNAに行ってくれ。」と頼まれたそうです。広岡知彦さんは、同年4月にCAPNA設立の準備のため名古屋にお越しいただきました。そのとき「とにかく電話一本を引いて、相談活動を積み上げていくことが大切だよ。」とアドバイスを頂いた大恩人なのです。僕の自宅に電話を引いて、CAPNA電話相談スタッフには僕の自宅で電話相談を始めたのでした。僕の家には愛犬ボニー(ウェルシュ・コーギー・ペンブローク)がいたのですが、電話相談員にいつも可愛がってもらい、とても喜んでいたのが昨日の出来事であったように思い起こします。
この30年の間に「児童虐待防止法の制定とたび重なる改正」、「児童福祉法の改正」、さらには2023年4月の「こども家庭庁の創設」など、子ども虐待を巡る社会の仕組みは大きく変わってきました。これらの動きは仕組みとしては前進しているように見えています。しかし一方で、子どもたちのおかれている社会状況は本当に良くなっているといえるでしょうか。「子どもの自殺」は年々増加し、文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校調査」の令和4年度の結果によると、小・中・高校から報告があった自殺者は計411人で前の年度の368人から43人増加しています。小学生の自殺者まで増えています。さらに「子どもの不登校」についても、小・中学校における不登校児童生徒数は約30万人となっており、高等学校における不登校生徒数は、約6万人にのぼっています。「子どもの貧困問題」に目を向けなくても、今の社会は、子どもたちにとって決して生きやすい、楽しいものにはなっていないことは明らかです。これはひとえに私たち大人の責任であると思います。
翻って、CAPNAを作るきっかけとなった事件は、平成6年7月の性的虐待でした。高校2年生の女子を児童相談所は保護し、両親の親権剥奪審判を獲得し、女子は祖父江文宏さんが施設長をしていた児童養護施設に保護されたのです。この裁判の申立てに僕はかかわり、愛知県にも大阪(児童虐待防止協会)や東京(子どもの虐待防止センター)のような民間団体を設立しようと思い立ったのです。最近の日本での「ミーツー運動」や「フラワーデモ」は、CAPNAがかかわったケース(岡崎支部の性虐待の無罪判決)が火付け役となりました。CAPNAの直接支援委員会にも、性的虐待についての相談が相次ぎ、司法面接につないだこともあります。日本国内で令和4年における未成年者(18歳未満)の性犯罪被害者数は、警察庁の統計で、刑法犯(不同意性交等や不同意わいせつ罪)だけで2440人にのぼります。性犯罪被害者全体の25.4%に相当します。中でも小学校入学前の「未就学児童」の不同意性交等罪やわいせつの被害者は84人、児童ポルノの被害者は39人で、把握されているだけで123人の未就学児童が性犯罪被害にあっています。これらの性被害の詳細なデータは、公表されておらず、新聞等の報道記事からでしか把握できません。「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止に関する法律」が施行されていますが、教員による児童生徒に対する性加害は日常的に報道されています。つい最近、日本版DBS(ディスクロージャーアンドバーリングサービス、前歴開示・前歴者就業制限機構)が制定されました。しかし、被害の大多数を占める「初犯」に対する効果は極めて限定的ですので、十分な対策とはいえない状況です。子どもを犯罪から守る5つの合い言葉である「いかのおすし」(「いか」ない、「の」らない、「お」おごえをだす、「す」ぐにげる、「し」しらせる)という一遍とおりの指導では対策として全く不十分です。保育関係者による未就学児童や、教員による児童生徒に対する性加害が決して少なくない現実をみたとき、僕としては、やはり学校や保育園の教室内に「セキュリティカメラの設置」をする必要があるのではないか、さらに「性教育カリキュラムの構築」に緊急に取り組むべきであると思います。
CAPNAとしては、「子ども虐待」に限らず、子どもたちの安心・安全な生活と親の支援に向けて、今後もソーシャルアクションを続けてまいりたいと思います。どうか今後も、CAPNAへのご支援ご鞭撻をどうか宜しくお願いします。
理事長 岩城正光